乳房再建
乳房再建の時期・回数
一次再建と二次再建
一次再建(同時再建、即時再建も同じ意味です)
乳がんを切除する手術と乳房再建のための手術を同時に行う方法です。
一次再建と言っても、1回の手術ですべてが完了するとは限らず、2回目の手術が必要となることもあります(二期再建の項を参照してください)。
一次再建の利点としては乳房の喪失感をあまり感じないですむこと、手術の回数が少なくてすむことが挙げられます。欠点としては、手術までの短期間に乳がん治療と乳房再建の両方について理解し、手術方法を決定しなければならないことがあります。
二次再建
乳がんの手術や化学療法などの補助療法が一段落したところで再建を行う方法です。利点は再建手術の内容についてじっくり考える時間をとれることです。欠点としては再建までは乳房を失った状態で暮らさなくてはならないこと、手術の回数が一回多くなることが挙げられます。二次再建を選択した場合、乳がんの手術と乳房再建の手術は別々の日程になりますから、それぞれの手術を別の病院で受けることも可能です。乳房再建を行っている病院が地元にないという場合でも、乳がんの手術は地元の病院で受けて、乳房再建は二次再建として別の施設で受けるという方法も考えられます。
一期再建と二期再建
一期再建
1回の手術で乳房のふくらみを作る方法です。一般的に乳がん手術では、乳腺組織に加えて乳輪乳頭や乳房の皮膚の一部も切除されることが多く、再建手術では乳腺組織の体積を補充するだけでなく、皮膚も補う必要があります。このため、身体の他の部分から皮膚を補充できる方法(自家組織による再建) を用いる場合や、皮膚の切除が非常に少なくて補充が不要な場合に可能な方法です。
二期再建
乳房のふくらみを2回の手術で作る方法です。乳がんの手術で切除された皮膚の不足分を補うため、まず1回目の手術で組織拡張器(エキスパンダー) を再建部位に埋め込みます。その後数週から数ヶ月かけてエキスパンダーに少しずつ生理食塩水を注入して膨らまし、再建部位の皮膚を伸ばしていきます。皮膚の余裕が十分できてから、エキスパンダーを取り出してシリコンインプラントや自家組織と入れ替える2回目の手術を行います。
これらの用語を組み合わせて「一次二期再建」、「二次一期再建」といった表現をすることがあります。
乳輪・乳頭の再建手術は、乳房のふくらみの再建が完了したあとに行うのが一般的で、「一期、二期」といった手術の回数の中には含めません。
手術方法
自家組織による再建
皮弁(自分の皮膚・脂肪・筋肉を取り出して作成した組織)を用いて乳房を再建する方法
利点
- 人工乳房よりも自然な形態の乳房が作りやすい。
- 皮弁自体に血の巡りがあるため、感染に強い。
- 一度落ち着けば生涯に渡ってメンテナンスの必要がない。
欠点
- 傷が乳房以外に新たにできます。
- 体の組織量が少ない場合は充分な大きさの乳房が再建できない場合があります。
- 1回の手術時間が人工乳房より長い。
- 移植した皮弁の壊死の可能性があります。
当科でよく行っている自家組織による乳房再建の方法
❶ 遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁術(DIEP flap)
腹部の皮膚・脂肪・血管(皮弁)を一塊でとりだします。一旦皮弁を栄養している血管を大腿部で切り離し、胸へ移植し、乳房を再建します。移植時に先ほど一旦切り離した血管を胸もしくは脇の血管と顕微鏡でつなぎ直して移植した皮弁に血流を再開させ、皮弁を生着させます。これにより腹部の約半分から2/3程度の大きさの皮弁をもちいて乳房を再建することができます。片側の栄養血管ではボリュームが不足する場合は両側の栄養血管を用いて、一方の血管を対側血管へバイパスを行い(皮弁内吻合)、より多くの皮弁を乳房再建に使用できるように血流付加を追加する場合があります。
※有茎腹直筋皮弁術(TRAM flap)±supercharge(TRAM supercharge)
放射線治療後などにより吻合血管の閉塞が高いと考えられる場合に①の方法に代わって行う場合があります。腹部全体の皮弁を片方の腹直筋をつなげたまま採取し、乳房の欠損部へ皮下トンネルを作成し、そのトンネル内から胸部へ皮弁を移植し、乳房を再建します。
特徴:
- 比較的大きな乳房を作成することができます。採取した腹部皮弁の約2/3程度の大きさの皮弁移植が可能です(下記に説明のある皮弁内吻合をした場合はより大きな皮弁を可能です)。
- 下腹部に約40cm程度の傷がつきます。
- お腹はスリムになります。
- 妊娠を今後予定されている方、腹部に手術歴がある方には手術可否について検討が必要な場合があります。
- 術後体重増加により腹壁瘢痕ヘルニアのリスクが高まりますので、体重増加には注意する必要があります。
合併症:
出血、血腫、感染、漿液腫、胸部の引きつれ感、圧迫感、乳頭温存の場合は乳頭の頭側偏位、胸部皮膚の壊死、皮弁壊死(顕微鏡で血管吻合した部位に血栓ができた可能性がある場合は緊急で吻合し直さなければならないことがあります。2-5%前後)、腹部の膨隆、腹壁瘢痕ヘルニア
(その他創部のひきつれ感や、疼痛、腫脹、しびれ、違和感などは個人差がありますが、手術の術後には感じることがあります。)
❷ 広背筋皮弁術
術中に体を側臥位(横向け)にし、背中から背中の筋肉(広背筋)と脂肪、皮膚を、栄養している血管をつなげたまま胸に移植する方法
特徴:
- 体型にもよりますが、比較的小さめから中程度の大きさの乳房再建にむいています。
- 背中に新たに15cm程度の傷ができます。
- 妊娠を予定している方、腹部の手術を受けた方でも行うことができます。
- 背部に漿液腫(体液のたまり)という合併症を引き起こし易く、外来にて穿刺吸引する必要があることがあります。
主な合併症:
出血、血腫、感染、胸部皮膚の壊死、血管のねじれ圧迫による皮弁壊死、漿液腫、創部離開、創部治癒遅延
(その他創部のひきつれ感や、疼痛、腫脹、しびれ、違和感などは個人差がありますが、手術の術後には感じることがあります。)
人工乳房による再建
人工乳房による再建にはいくつか注意点があります。まず、乳腺を切除すると胸部の皮膚はうすくなってしまいます(術後残した胸部皮膚が血流不足により一部壊死に陥る場合があります)。そのため、再建に用いている人工物は乳腺を切除してできたスペースではなく、また新たに乳腺の下にあった大胸筋という筋肉をはがしなおして、スペースを作り、その大胸筋の下に挿入します(そうすることでもし胸部の皮膚が壊死に陥っても直接留置した人工物が露出しないようにします)。しかし大胸筋の下に作ったスペースはせまいため、例外を除いて、直接人工乳房を挿入せずにいったんティッシュエキスパンダー(以下TE;図1)という風船のような人工物を代わりに挿入します。その後外来でそのTEに注射器を使って生理食塩水を数回から数回にわけて注入し、膨らませて行きます(1ヶ月から3ヶ月程度注入する期間が必要となります。注入頻度は月に2−4回程度です。)注入終了後、6-8ヶ月程度保定期間をおいた後に人工乳房(図1)へ入れ替える手術を行います。
図1
左:ティッシュエキスパンダー(TE)
右:人工乳房(シリコンブレストインプラント)
特徴
- 一回の手術時間が自家組織再建より短い。
- 胸部以外に傷がつかない。
- 2回にわけて手術を行う必要があります。
- 人工物であるため形が決まっているため、自家組織よりも自由に形をつくることが比較的しにくい場合があります。
- 経年劣化により人工物が破損する可能性があります。(10年で数%の破損率)
- 被膜拘縮を引き起こすことがあります。これは経時的に人工乳房を包む膜が小さくなってきて、人工乳房の輪郭がはっきりしてしまったり、表面が不自然に波打って見えたり、再建した乳房が小さくなることをさします。また術後に人工乳房の回転・位置移動することが稀にあります。
