口唇口蓋裂
口唇裂とは
生まれつき上唇にくびれがある状態のことを言います。くびれの程度は様々で鼻や唇形態の左右差で気づかれる患児(痕跡唇裂)もあれば唇だけがくびれている例(不全唇裂)、鼻の中までくびれている患児(完全唇裂)、そして上あご(口蓋裂)や歯ぐき(顎裂)にまでくびれが及んでいる患児(唇顎口蓋裂)もおられます。またくびれが上唇に一つのみ(片側唇裂)の場合と、二つ(両側唇裂)有る場合があります。形態および機能に関わるため、成長に合わせて段階的に、その程度および病態にあうように治療を進めていくことが重要です。
口唇裂の治療
チーム医療が重要となるため、矯正歯科医・言語聴覚士・小児科医・耳鼻咽喉科医・産婦人科医などとも必要に応じて連携して治療を行います。
図:唇裂治療におけるチーム医療
(参考文献:長期的経過を見据えた初回片側口唇裂手術:Rotation-advancement法 上田晃一, 廣田友香. PEPARS No.186:1-10, 2022.6 より引用改変)
唇裂初回手術前
唇裂には裂の範囲や場所によりいろいろな形態があり、程度もさまざまです。唇裂初回手術は通常生後3か月ごろに行うため、それまでの期間の哺乳補助として、また症例ごとの症状に応じた術前矯正として、いくつかの術前療法を行います。例えば、口唇裂に対する口唇テーピング(肌に優しいサージカルテープを用います。口唇の裂幅を狭める効果、上あごの突出を抑える効果もあります。)、口蓋裂用乳首(特殊な形状の哺乳瓶に装着する先端部です。普通の乳首だと哺乳が難しい子も楽に飲めます。)、口蓋裂に対する口蓋床(ホッツ床と言います。上あごの割れ目部分に装着し裂を塞ぐ装置です)、完全唇顎口蓋裂に対するNAM床(Nasoalveolar Moldingの略で直訳すると“鼻・歯槽・成形”です。口蓋床(ホッツ)に鼻の軟骨を矯正するつっかえ棒が付いた装置です。垂れ下がった軟骨を矯正します。)などが挙げられます。口蓋床やNAM床は連携している矯正歯科に依頼して作製頂いております。
唇裂初回手術
唇裂形成術(唇の手術)はミルクを飲むことをたすけることを目的としており、安全に全身麻酔がおこなえる生後3カ月目頃に行います。方法はMillard法+小三角弁法を用いています。ミルクを飲むためには唇を動かして口すぼめをすることが重要となりますので、見た目のくびれをきれいに治すのみならず、くびれによって断裂している口唇を動かす筋肉(口輪筋)をつなぎ合わせることで口唇の形態も運動も自然になることをめざしています。またこの初回手術では外側に垂れ下がった小鼻の位置も矯正します(鼻の軟骨は初回手術では触りません)。異常な部位に付着している鼻筋をはがし、鼻翼(小鼻)の位置を左右対称となる位置に引き締めます。手術後は創部の安静目的で抜糸までの数日間は経管栄養(鼻からミルクを注入)で管理します。そして抜糸後は手術創が出来るだけきれいになるようにサージカルテープ固定を約3か月程度行います。約1週間の入院となります。
口蓋裂手術
上あご(口蓋)は話をすることや物を飲み込む時に非常に重要です。発語し始める時期は言葉をたくさん覚える時期でもあります。その時期には、自分が喋っていることを聞いてその音を覚えます。間違った発音をしていると、間違った発音で覚えてしまうということになります。よって、口蓋裂手術(上あご~のどちんこの手術)は発語し始める時期である1歳半ころに行います。現在形成外科で広く用いられる手術方法はプッシュバック法とファーラー法の二つがあります。裂の幅に応じて使い分けますが、当科ではプッシュバック法を用いる症例が多いです。術後数日間は創部の安静目的に経管栄養(鼻から栄養剤を注入)で管理します。創部が落ち着きつつあることを確認し、流動食(重湯や具なしのお味噌汁など)から経口摂取を開始し、ミキサー食、きざみ食、柔らかめの食事と徐々に食事形態を上げていきます。約10日~2週間程度の入院で、通常はミキサー食程度の食事形態の段階で退院となります。
唇裂外鼻手術
当施設では鼻の成長を考えて初回の唇裂手術においては鼻への手術操作を最小限にとどめており、外鼻形成手術(鼻の形態修正手術)は小学校就学前の4-6歳ころに行います。唇裂のある患児は小鼻(鼻翼)が外側に広がりひしゃげて(扁平化)おり鼻の穴(鼻孔)がせまくなっている(狭小化)ことが多いです。方法は当科(大阪医科薬科大学形成外科)を開設した初代教授である田嶋定夫先生が考えだしたReverse U切開法(逆U字切開法)を用いております。唇裂における鼻の変形の原因の一つは軟骨の位置異常です。先にも述べましたように唇裂の初回手術で鼻の形態を維持する筋肉は必要最小限で矯正されていますが、鼻の軟骨と皮膚の位置関係はズレた状態のまま残っています。この手術の目的は軟骨をできるだけ正しい位置に戻すことです。約10日間の入院となります。退院後は後戻り変形予防に鼻孔の固定器具(リテイナー)の装着を約3か月間行います。
図:Reverse U切開法(逆U字切開法)(シェーマ)
(参考文献:外鼻を含む口唇裂修正手術における周術期管理 廣田友香, 上田晃一. 形成外科2021 64(8):91-98より引用改変)
顎裂部腸骨移植術
歯ぐきにもくびれがあることがあります。歯ぐきが割れていると、土台である骨がない状態ですので、そのくびれ部分に歯が生えてくることができません。また歯科矯正もうまく進みません。特にくびれができる位置は、犬歯が生えてくる位置です。そこで、歯が萌出する土台を作る目的で犬歯が生えてくる時期である8~9歳前後に腸骨(腰の骨)を移植する手術を行います。本手術におきましても術後の数日間は流動食形態のお食事のみに制限し口腔内創部の安静を図ります。創部が落ち着いてくる術後数日目からミキサー食、きざみ食へと段階的に食事形態を上げていきます。また、腰の骨を採取するため術後数日間は車いすでお過ごしいただきます。少しずつ安静度を上げていきます。約1週間~10日間の入院となります。
言語療法
週一回言語療法士が外来で言語訓練を行っております。
矯正
一般矯正歯科医師と連携して行っております。
二次修正手術
必要に応じて修正手術や顎矯正術を行う例もあります。
